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97/08/27
入魂企画
はじめてのJAZZ
世界一わかりやすいジャズ入門
第一回
’ジャズとはこうなっているのだ’


■ジャズにまた革命「クールの誕生」。50年代。

 「おいおいジャズってのはそんなにしょっちゅう”革命”が起こるのかい?」起こったんです、このころは。ひたすら速く、熱く盛り上がるビ・バップに対し、対位法的な編曲を重視し、あくまで知的に、クールにキメる「クール・ジャズ」が誕生したのです。

'Birth of the cool'
Miles Davis
(CP32-5181 EMI)
 その代表作が、緻密な編曲のもと9重奏団でレコーディングされたマイルス・デイヴィスのアルバム、その名も『クールの誕生』('49年)です。これが、最高!カッコイイ!今聴いても50年という時代の隔たりを全く感じることなく、新鮮に、クールに響いて来ます。
 なぜこれが革命か?というと、先程のビ・バップがモダン・ジャズの祖先だとすれば、このクール・ジャズは曾祖父さんくらい、かなり近い存在なんです。本当に、この一枚から時代が切り替わった感じがしますよ。

 しかしこのマイルスというオッサン、40年代にはパーカーと一緒にビ・バップもやっていたのに、いきなり正反対なサウンドをクリエイトするとはねェ。まあ、このへんから「帝王マイルス」の歩みが始まるのですが。
 さらに表をご覧下さい。この50年代、そして60年代がジャズのスタイルが最も変化し、多様化していった時代。クールをさらにクールにした(?)ウエスト・コーストや、ノリノリでかつ洗練されたサウンドを繰り広げるハード・バップ、ファンキーなども生まれています。
 ウエスト・コーストの代表曲で皆さんが絶対にご存じなのが5拍子の名曲、デイヴ・ブルーベックの「テイク・ファイブ」('59年)、ファンキーでは「来日('61)のころ、そば屋の出前持ちが口笛を吹きながら自転車に乗っていた」という絶対にウソだと思われる伝説の残っているアート・ブレイキーの「モーニン」('58。チャッチャ・チャラララ・チャッチャー....ってヤツ)でしょう。



'TIME OUT'
Dave Brubeck
(32DP-593 CBS)



'MOANIN''
Art Blakey and
The Jazz Messengers
(CJ28-5052 EMI)


 いわゆるジャズの有名曲の多くはこのころに作られました。当時のアルバムはどれも「歴史的名盤」といわれていますが、そんな名盤ばかりが毎月の様に誕生していた時代ってのはホント、スゴイですよね。そうそう、ジャズ専門の名門レーベル「ブルーノート」や「プレスティッヂ」が怒濤の如くレコードを出しまくるのもこのころです。「レーベル」についてはいずれ大特集しますよ!


■新しい血、新しいジャズ。60年代。

 60年代の初頭は50年代からのクールやハード・バップ、ファンキーがミックスされ、今日のいわゆる「モダン・ジャズ」の代表的なナンバーが出揃います。アリナミンのCMで使われていたナット・アダレイの「ワーク・ソング」('60)や、角川のジャズ映画『キャバレー』(観てません。どんな出来だったんだろう?)で有名になったマル・ウォルドロンの「レフト・アローン」('60)などがお馴染みでしょう。



'The Capitol years'
Cannonball Adderley
(with Nat Adderley)
おススメ盤!
(CDP7954822 Capitol)

'LEFT ALONE'
Mal Waldron
(30CY-1431 Colombia)


 また、定型的なスケール理論を覆した「モード」という手法も発生します。難しい理論は置いといて、これが非常にキモチイイ。表のページのマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンの2枚は代表的なモード作品です。特に、マイルスのアルバムは、「うん、これがジャズだな」と思わせるとてもシブイものがあります。

そして中盤からはジャズ以外の「新しい血」を注入したユニークなサウンドが誕生し始めます。まずは、ジャズとブラジルのサンバをミックスした「ボサ・ノヴァ」。代表曲「イパネマの娘」('63)はクール派テナー奏者スタン・ゲッツと、ブラジルのミュージシャン、ジョアン・ジルベルトの共演で有名になりました。

 さらにはパーカッションを多用したアフロ・キューバン、ロックのビートを感じさせる「ジャズ・ロック」なども生まれました。なかでもジャズ・ロックの典型、リー・モーガンの『サイドワインダー』は是非聴いておきたい名曲です。また、従来の音楽の概念から大きく解き放たれた「フリー・ジャズ」もこのころに現れました。序章で先輩に押しつけられてしまった「ぎゃるるる、ぎょるるる」です。アルバート・アイラーやオーネット・コールマンがその代表で、これぞまさに「新しいジャズ」ではありますが、まあ、これは上級編ですね。



'GETZ/GILBERTO'
Stan Getz and
Joao Gilberto
(POCJ-1802 Polydor)


'A day in the life'
Wes Montgomely
(D32Y-3801 Canyon)


 60年代の終わりには遂に、エレクトリック・ピアノやエレキ・ベースなどの電気楽器が使われ始めます。これが現在のフュージョン・サウンドにつながるのでしょう。仕掛人はまたしてもマイルス・デイヴィスといわれていますが、私は個人的にハード・バップの名ギタリストだった黒人ウエス・モンゴメリーが心機一転、ビートルズ・ナンバーを採り上げた名盤『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』の重要度が高いと考えています。


■フュージョングループの70年代。そして今。

 70年代は有名なウエザー・リポートやリターン・トゥ・フォーエバー、スタッフなどの電気を使ったグループが隆盛を誇った、らしい。すいません、ほとんど聴かないんです。
 但し、この頃の作品で絶対に外せないのがプレスティッヂ・レーベルを中心に発表された一連のソウル・ジャズものです。もう、これが、コテコテ!朝7時から骨付カルビにむさぼり付く様なエグさに満ち溢れています。実は大好きなんです!書き出すと止まらないので、ここでは我慢。特集をお待ち下さい。コテコテ。

 80年代は「新伝承派」とかいう昔っぽいのを演る若い人達ががんばっていたそうだ。ここも聴かないんでちょっと....。

 そして!90年代、ジャズはちょっとした転機を迎えます。ことの起こりは80年代後半、ロンドンのクラブでギャズ・メイオールなどのDJ達が若いやつらを踊らせようとファンキーやアフロ・キューバンなどをかけまくった。そしてこれがウケまくった!レコード演奏に留まらず「踊れるジャズ」を演奏する若いミュージシャン達も登場。生演奏、生+コンピューター、コンピューターのみでジャジー・テイストのダンス・ミュージックが創り出されました。これが世に言う「アシッド・ジャズ」ムーブメントです。

 表中のUS3はアメリカのサンプリング+トランペット+ラップのユニット、UFOは全員リミックスのみ行って楽器は演奏しないという不思議な日本の3人組です。そうそう、日本人アーチストの海外での評価が高いのもアシッド系の特徴。UFO、モンド・グロッソとも日本より海外の方が有名では?
 演奏(?)形態が変則なので従来のジャズ・メンとは一線を画しているアシッド系ですが、生演奏主体のモンド・グロッソなどは、ベテラン・ジャズ・メンからも関心を集めているようです。ソウルな女性ヴォーカルとか入ってて、結構聴きやすいっスよ。イギリスのテナー奏者、コトニー・パインなどはしっかりした演奏とDJの組み合わせで聴かせたりもする。うーん、いかにも新しい時代って感じですね。



'CANTALOOP'
US3('92)
(C2-15892 Capitol)
ちょっと驚いた

'Jazzin''
UFO('92)
(XRCN-1018 ZERO)
もっと驚いた

'Closer'
Mondo Grosso('97)
(FLCF-3693 Fourlife)
かっこいいのだ


 正直いうと、なんちゅうか、アシッドは、難しいネ。カッコイイのは徹底的にカッコイイ。タイクツなのは徹底的にタイクツ。差が激しいんだよな。でも同時に起こったモダン・ジャズ、中でもよっと地位の低かったソウル・ジャズの再評価運動は素晴らしいことですね。かつてパンクだった友人の多くも、いまやみんなジャズにハマッて、「オルガンもの凝っててさ」とか、イッパシのジャズ・ファンみたいなこと言ってます。まあ「良いものは良い」って当たり前の事に気づき始めただけなんですが...。

 いろんなことがあったけど、結局'50、'60年代−ジャズが一番熱かったころ−に回帰しているていうのが今のジャズかもしれません。ちょっと面白いですね。

 さてさて、JAZZ100年の歴史とスタイルの説明、いかがだったでしょうか?「もしかして、聴いてみたいのはこのへんかな?」というカンは働きましたか?
 そしてそして、グッドタイミング!そのジャズが一番熱かったころの貴重な記録、映画『真夏の夜のジャズ』がまさに今、リヴァイヴァル上映中です。次のページにて詳細をご紹介。必見です!



必見なのだ
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