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97/08/27
入魂企画
はじめてのJAZZ
世界一わかりやすいジャズ入門
第一回
’ジャズとはこうなっているのだ’


■JAZZ誕生は20世紀とともに

 我々が親しんでいるジャズは20世紀の幕開けとともに誕生しました。その起源については諸説入り乱れていますが、個人的には「フランスのレヴューに使われていた”カドリール”が変化したもの」という細野晴臣説と、「開放された黒人奴隷が、南北戦争の残りの楽器を手にして、もの悲しい−白人が聴けば奇妙に感じるような−スケール(音階)で演奏をした」という山下洋輔説をアテにしています。まあ実際、音楽的傾向は前者、きっかけは後者ってところでしょう。
 そのジャズと切ってもきれないのが「ラグタイム」という音楽です。音楽史的な何やら難しいサウンドのように思えますが、実はこの「ラグタイム」、TVや映画でみなさんにもすっかりおなじみです。最も有名な曲は映画「スティング」('71)のテーマ曲だった『エンターティナー』でしょう。あのトッテ、トッテというリズムの独特なサウンドが「ラグタイム」です。あの曲の作曲者であり「ラグタイムの父」といわれたのが、作曲者兼ピアニストのスコット・ジョプリン('17年没)です。彼と、やはり作曲とピアノのジェリー・ロール・モートンはジャズのルーツを超えて、全てのポピュラー音楽のルーツといえるでしょう(あとフォスターも重要)。そうそう、TV番組「料理天国」のテーマ曲も典型的なラグタイム・スタイルでしたね。
 「ジャズといえば黒人」というイメージがありますが、その発祥の地、ニューオーリンズには黒人と白人の混血人種「クリオール」がおり、彼らがジャズ誕生に果たした役割は重要です。例えば上記のジェリー・ロール・モートンもクリオールで、「自分は黒人ではない」ということに非常なプライドを持っていたそうです。冒頭に書いたのフランス音楽とのミクスチュアもクリオールがいたからこそ可能になったもののようです。



Scott Joplin
(1869-1917)


後列左から2人目が
バディー・ホールデン
(1877-1931)


 しかしこのころの音楽はまだ「ジャズ」として確立されていたとは言い難いようです。「ラグタイムはあくまでラグタイム」と考えた方がいいのかもしれません。しばらくするとピアノを中心としたラグタイムに対して、トランペットやドラム、バンジョーなどを入れた小編成バンド形態の「デキシー・ランド」が発生します。これも実はおなじみですね。ピザショップ「シェイキーズ」で演奏されている陽気なアレです。この小編成が「コンボ」と呼ばれ、今日のジャズ・バンドの原型になったとも考えられます。
 コンボ編成で人気を博した(サウンドはラグタイムだったようですが)のが、コルネット奏者のバディー・ホールデンで、彼は世界初の「ジャズ・メン」であるといわれています。いわれていますというか、自ら「ジャズは俺が1902年にニューオーリンズで作った」と豪語していたそうです。その強力なキャラクターが災いしてか1907年彼は演奏途中に発狂してしまいます。

 しかし考えてみればジャズ史100年の中で発狂し、廃人になったジャズ・メン数知れず。世界初のジャズ・メンは、世界初の発狂ジャズ・メンでもあったわけです。ちょっとオソロシイ世界ですね。ジャズの歴史は発狂者達によって築かれて来たのか?これは大きな命題です。


■ジャズの光と影。20年代と30年代。

  1920年代に入るとバンド編成に変化が生じます。いわゆる「ビッグ・バンド」の誕生です。背景となったのは世紀の悪法といわれるアメリカの禁酒法('20年施行)のようです。禁酒法時代の闇酒場を仕切るマフィア達が雰囲気を盛り上げるために楽団を入れた、その筋の人達ってのはなにしろ羽振りがいいので人数も沢山にした。前半は本当ですが、後半はシャレです(笑)。表では30年代に入れましたが、ビッグ・バンドの神様、デューク・エリントンが活動を開始したのもこのころです。


'Duke Ellington Best20'
(R32J-1036 BMG)


 サウンドはその背景に合わせあくまで妖しく、このころを代表する曲といえば映画『コットンクラブ』で使われた、エリントン作曲の歴史的名曲「ザ・ムーチ」('28)があります。覚えていますか?妖しい曲でしたよね。
 この時代、ジャズの中心地はニューオーリンズから、マフィアが牛耳るシカゴやニューヨークのハーレムに移り、その地の名前をとって「シカゴ・ジャズ」「ハーレム・ジャズ」と呼ばれました。また当時、中部ミズーリ州カンサス・シティもジャズの街でした。ここもやはりマフィアがらみで...。なにしろ市長がマフィアの大ボス、トーマス・ジョセフ・ペンダーガストだったというのですから。

 30年代、禁酒法が廃止('33年)されるとビッグ・バンド・サウンドも軽快でダンサブルなものに変化して行きます。スウィング時代の幕開けです。スウィングはみなさん御存知でしょう!代表選手はトロンボーンのグレン・ミラーとクラリネットのベニー・グッドマン。超有名曲「イン・ザ・ムード」「ムーンライト・セレナーデ」(以上グレン・ミラー)「レッツ・ダンス」「シング・シング・シング」(以上グッドマン)などは今でも頻繁にTVCM等で使われています。ちょっと前ならそうだな....シーフード・チェーン「レッド・ロブスター」のCMで「イン・ザ・ムード」が使われていましたね。



'The Unforgettable
Glenn Miller'
(PCDI-5459 RCA)



'Benny Goodman
16most requestedsongs'
(DIDP079713 Columbia)


 思えば私が最初にジャズという音楽の存在を知ったのも小学校時代に観た映画『グレン・ミラー物語』と『ベニー・グッドマン物語』でした。この2本は必見の名作!いずれ特集しましょう。
  また、ジャズ、というかこうしたポピュラー音楽ががラジオというメディアに乗り、人々に広く聴かれはじめたのもこの時代の特徴です。メディアを通じてヒットが生まれる現代のスタイルはこのころに誕生したものです。


■ジャズに大革命。「ビ・バップ」の誕生。40年代。

 ここでジャズに最初の革命が訪れます。チャーリー・パーカーらによる「ビ・バップ」の誕生です。「ビ・バップ」とは、乱暴な言い方をすれば「決められたテーマを演奏したあと、そのコード進行に基づきアドリブ演奏を行うスタイル」のことです。これはスウィング時代にはなかったもので、グラン・ミラーなどの曲中のアドリブ・ソロに聞こえる部分は実は事前に譜面で決められており(ジャズメンの間では「書きソロ」といいます)、何回演奏しても同じメロディーだっという話もあります。真偽の程は定かではありませんが、私が1回だけアマチュア・ビックバンドを手伝ったときは確かに「書きソロ」でしたね。
 そもそもこのビ・バップ誕生の影にはいわゆる「営業」的な仕事のマンネリさにウンザリした若手ミュージシャン達が夜な夜なジャズ・クラブに現れては、自分達のやりたいサウンドを求めて自由なジャム・セッションを繰り広げていたというエピソードもあり、そんな意味からもスウィングとは対極にあるものかもしれません。

 正確にいうと、即興演奏自体は20年代に活躍した夭折の天才トランペッター、ビックス・バイダーバックが創始者と言われていますが、バイダーベックは譜面や理論が全くわからず、ひたすら感性だけで吹きまくっていたというちょっと別格の超天才。それに対し、パーカーらビ・バップの一派は高尚な音楽理論を駆使し、コードとは、メロディーとは、アドリブとは、と追求してそのスタイルを確立しました。残念ながらこのビ・バップ、ジャズ・ファンの中では「必須科目」という感じなのですが、一般の人達にはあまり馴染みがありませんね。

 さて「決められたテーマを演奏したあと、そのコード進行に基づきアドリブ演奏を行うスタイルって、別にビ・バップに限った話じゃなくてジャズみんなに当てはまるんじゃないの?」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。そうです。そうなんです。このビ・バップの理論が現代のアドリブ演奏を中心としたモダン・ジャズ理論の基礎中の基礎なんです(勿論ビ・バップのクセみたいな独特な部分があるにはあるんですが)。編成を変えたり、風味を変えたり、電気を入れたりして「XXジャズ」と言われる様々なスタイルが誕生していますが、その根底に流れるコードとアドリブの基礎理論はこのビ・バップによって確立されたのです。

 では「ビ・バップの創始者チャーリー・パーカーはモダン・ジャズの創始者か?」これも大きな命題ですが、あながちハズレではないでしょう。これはそう言い切ってしまってもいいかもしれない。

'Charlie Paker on Savoy'
(K32Y-6083 KING)


パーカーの伝記映画
『バード』('88)
詳しくはこちら
 ちなみにこのパーカーも、麻薬とアルコールで精神を病み、精神病院の入退院と、レコーディング中に昏睡するなどの奇行を繰り返した挙げ句34歳で亡くなっています('55年3月)。その死亡証明書には「推定年齢53歳」と書かれていた、というのは有名な話。まさに生き急いだ人生でした。歴史を築いた狂人のひとり(?)です。

 しかしおかしいなあ、確かこのころデッカイ戦争があったハズなのに、アメリカじゃみんな楽器やる余裕あったのかな?ディズニー映画とかもずっと撮られていたし、そんな国と戦争したって負けるに決まってるわい。


 うーん、さすがはJAZZ100年の歴史。思いっきり雑に飛ばしてもまだ半分。後半は次のページに!またクリックをお願いします。



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