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97/08/27
入魂企画
はじめてのJAZZ
世界一わかりやすいジャズ入門
第一回
’ジャズとはこうなっているのだ’



'Jazz on a summer's day'
真夏の夜のジャズ

A film by
Bert Stern

Player
Jimmy Guffre
Thelonious Monk
Sonny Stitt
Anita O'day
George Shearing
Dinah Washington
Gerry Mulligan
Big Mabel Smith
Chuck Berry
Chico Hamilton
Louis Armstrong
Jack Teagarden
Mahalia Jackson
Eric Dolphy
Jim Hall
Art Farmer
Wynton Kelly
Max Roach
and others

1958, July 3rd-6th
Newport

1959 Raven films,inc
(color 82min.)
■一体どれくらいの人がこの映画で人生を狂わせたことか....

 なんと素晴らしいタイミング!現在リヴァイヴァル上映中で、これからジャズに近づく人にぜひ是非観て欲しい超名作「真夏の夜のジャズ」をご紹介しましょう!

 アメリカ映画「真夏の夜のジャズ」(原題'JAZZ ON A SUMMER'S DAY')は1958年7月のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルを淡々とフィルムに焼き付けた記録映画です。時代はクール派の流れを汲んだ知的なウエスト・コースト派と、ハード・バップ、ファンキーといったノリノリのサウンドが拮抗し、60年代の多種多様なスタイルにつながるまさに前夜(うーん、前ページの表、便利ですね、と自画自賛)。ちょとつかみどころのない言い方になってしまいすが「JAZZが最もJAZZだった時代」かもしれません。

 私がこの映画を観たのは前回リヴァイヴァルされた1986年6月でした。衝撃的でした。当時大学生だった私は、まだ「この世はロックがすべて」と思っている青二才で、そうそう、衝撃的なシーンがあったんだ。クールなファッション、クールな面持ち、そしてクールな演奏を繰り広げ、次々登場するジャズメンの合間に、唯一ロック界からチェック・ベリーが登場するんだけど、これが、実に、カッコワルイ。ロック命の私が神様だと信じていたチャックが、錚々たるジャズメンに挟まれると、なぜか貧弱に見えてしまうんだ。悲しいような、悔しいような、複雑な気持ちだったなぁ。ウソじゃないです。あの部分確実に「浮いて」ますよ。

 監督のバート・スターンは映画人ではなく、実は新進気鋭のカメラマンだったんですが(なんと当時30歳)、そんなところもこの映画が歴史的傑作となった理由でしょう。全てのカットがまるで写真集のように計算され、無駄がない。しかも素材の選び方が実にユーニク。必ずしも演奏中のミュージシャンばかりが映っているわけではないんです。最高にファッショナブルな観客や、真夏のニューポートの風景、そして同時に開催されていたヨットレース!思い出しただけでも涙が出て来ます。
 とにかくオープニングから「最高!参った!」って感じでした。ヨットハーバーの揺れる水面に重なった、登場するジャズメンのクレジット、バックに流れるジミー・ジュフリー3の「ザ・トレイン・アンド・ザ・リヴァー」....あんなに素晴らしいオープニング・タイトルは他に観たことがありません。あと、珍しいジャズ・チェリスト、ネイサン・ガーシュマンがバッハの曲で練習をするシーンも秀逸。途中で煙草を吸うところ、シブすぎる!
 そうそう、初めて映画館でビールを買って飲みながら観たのがこの作品だったな。映画の途中でロビーに抜け出して買ったんだ。観ているうちに無性に飲みたくなって....。

 一体どれくらいの人がこの映画で人生を狂わせたことか。狂わないまでも思い出の一作として記憶している人は数えきれないのではないでしょうか。
 個人的な話になってしまいますが、うちの家族は全員、バラバラにこの映画を観ています。両親が観たのは当然初回公開の時(60年)。当時声楽をやっていた母親はセロニアス・モンクの独創的なサウンドに「へえ、世の中には不思議な音楽があるもんだ」と驚いたそうです。大学生だった父親はJAZZもさることながら、アメリカの豊かさ、特にヨットレースに驚嘆。本当にヨットのコーチになってしまいました(単純なヤツだ)。かくいう私も、真っ赤なジャケットにクルーカットで颯爽と登場したジェリー・マリガンとその楽器、バリトン・サックスにノック・アウトされ、100万出して同じ楽器を購入。全然うまくなりませんが、バリトン奏者のはしくれとなり現在に至っています(父親と変わらん。やはり単純なヤツである)。ホント、マリガンのシーン特に見応えありますよ!

 あまり内容を話してしまうと、楽しみが減るのでご紹介はここまで。東京・六本木のシネ・ヴィヴァン・六本木にて10/9まで夜21:15からのレイトショーで公開中です(レイト終映は22:55。但し10/5はレイトは休映。9/27、28の10:45から、10/5の10:00からモーニング・ショウもあり)。
 このために地方からお越しになって観ても十分に価値のある名作です。同じビルにある大型レコード店WAVE六本木は都内でも有数のJAZZコーナーを持つ有名店。気になったアーチストのCDを是非探してみて下さい。そうそう、歩いて10分くらいのところには東京一の老舗ジャズクラブ、六本木ピットインもあります。映画、CD、そしてLIVEとJAZZ三昧の一日はいかがですか?

 この一本があなたの人生に忘れられない作品になりますように。素敵な「真夏の夜」をお過ごし下さい。
 




■次回予告■

「さあ最初の1枚は?」


さて次回は、あなたが最初に手にする
記念すべき1枚を何にするかを考えてみましょう
はじめての経験が良くないと、暗いシコリが残るものです
軽はずみなことはせず、慎重に考えましょうね

「『真夏の夜のジャズ』観ました!」というメールも熱望します!




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