00/01/23
第七回
入魂企画
はじめてのJAZZ
世界一わかりやすいジャズ入門
緊急ミニ特集
中級ジャズファン
ホントの愛聴盤




 フリー・ジャズにハマりたい

その6 


 フリー・ジャズに全く無関心な人−これは非常に少ない様です。読者の方からのメールを拝見していると、老若男女を問わずココロのどこかにフリーに対する興味が潜んでいるようですね。

 しかし、少々近寄り難い。オーネット・コールマン(as)、アルバート・アイラー(as)なんて名前は良く聴くのだけれど、ちょっと試聴してみるとメロディーもリズムもバラバラに分解されていて正直なところツライ。もっと"入り易い"フリー・ジャズはないのかという方に、次のアルバムをお薦めしましょう。


KARMA
PHAROAH SANDERS (ts)
MVCJ-19107 (VICTOR)
1969

 いやぁ、いいジャケットですなぁ。瞑想しとります。なにやら空中に浮遊しそうな雰囲気です。ファラオ・サンダーズの名盤『カルマ』はヒッピー・ムーヴメント華やかな'69年に吹き込まれたフリーの傑作。しかしこれは単なるフリー・ジャズを超えて、一種のアヴァンギャルド・ミュージックの様な気もします。

 収録曲は2曲。32分45秒に及ぶ「ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン」と、5分41秒の「カラーズ」です。まずは「ザ・クリエイターズ...」を聴いてみると...意外にブルースっぽいテーマーが登場、「あれ、聴き易いな」と思ったとたんに♪ギョエ〜というフリーキー・トーンが(笑)。それに続き延々と繰り返されるメロディーは実に仏教的。いわゆるジャズ・フォーマットからは完全に外れていますが、これが徹底的に快感です!
 インドの密林を思わせるようなサウンドか続き、「なんか環境音楽みたいだな」と思った20分過ぎ、突如大爆発!全楽器の叫び声が沸き上がります。しかしそれまでの盛り上げ方が絶妙なのか、この雄叫びもなんとなく素直に受け入れられてしまうんですよねぇ(笑)。

 ファラオ・サンダースは'67年7月に亡くなったテナー・サックスの哲人ジョン・コルトレーンと行動を共にし、トレーンの死後はその後継者として期待された人物。しかし本人は、「祭り上げられてしまった」感もあるその期待に押され、一時は自分の進む道を見失ってしまったそうだ。「コルトレーンの呪縛」−とまで書く人もいるくらいである。
 その「呪縛」から脱出し、自らの道を見いだしたのがこの『カルマ』だった。「カルマ」−仏教用語でいう「業」である。先祖から伝わる、自らが育んだ、人間としての運命。そうしたものを見据えて創り出したアルバムがこの傑作であったわけだ。

 とまぁ、どうしてもフリー関係のことを書くと文章が難しくなってしまいますが、不思議と日曜日の深夜などに聴きたくなるアルバムでもあります。一種の「音のシャワー」に身を任せたくなってしまうのかもしれないなぁ。マンションのお隣のKさんには本当に申し訳ありませんが(苦笑)。

 そういえば新宿のジャズ喫茶でリクエストして、お客さん数名で聴き惚れた、なんてこともありました。同行した友人は「こりゃプログレに近いなぁ」とも言っていたっけ。ともあれココロのどこかでフリーを欲している方、このアルバム、お薦めです。




ここまで来たら
つぎはこれか?
サン・ラの「シングルズ」




 浅草のジャズ・バーFのマスターは昭和26年のJATP(アメリカのオールスター・ジャズ・バンド)来日を「高校をさぼって観に行った」という大先輩。ふとしたことからフリー・ジャズの話となり、ファラオ・サンダースの名前を出すと、店の奥から一枚のCDを持って来てくれました。つい最近出たファラオの最新盤でしたが、これがコルトレーンの『バラード』('62年)そっくり。
 「笑ってしまうくらいに似ているでしょう」と言うマスターと共にしばし聴き惚れ、「結局ファラオはここに帰って来たんですかねぇ」などと語り合っていました。

 フリーとバラード、対照的な様に見えて実は表裏一体なのかもしれません。そんなことを考えた浅草の夜でした。






■ あとがき ■


 本文中にも書いた通り、いやぁ今回の特集は実に気持ちがいい。「いつか紹介しよう」と思っていたアルバムが次々書けたからです。12枚と言ってしましたが、なんだかんだで20枚以上ご紹介していますね。いずれもかなり中毒性の高いアルバムゆえ、ご使用については各自の責任で慎重にお願い致します。

 マジメな話、前回の入門用作品とはかなり性格が異なります。前回のものがまさに「最初の1枚」−学校の教科書の様な優良盤だとすると、今回のものは一生離れられない「腐れ縁」のような(笑)、そんなクセのある作品が多いです。まぁ、それこそがジャズの魅力なんですが。
 ご感想大歓迎。買った、惚れた、ジャズ喫茶でリクエストした等々。クセのある作品が多いので今回はユニークなエピソードが集まるかもしれませんね。

 というわけで、リクエストにお応えしてのミニ特集、「中級ジャズファン・ホントの愛聴盤」でした。去年はちょっとロックに偏ってしまったので、今年はこの通りジャズで行きますよ!
 私事ではありますが実は年明けに異動しまして、比較的自由のきく開発部門から超激務の企画部門に変わってしまいました。でも、多忙なほど逆に文章が書きたくなる(?)。最低あと2回は更新したいと思っています。

 さていよいよ次回は「ジャズ映画大特集」の完結編。モダン・ジャズをフィーチャーしたヌーヴェルヴァーグ作品や、MGMミュージカルのご紹介。更には「若人のための日本のジャズ映画入門」なども予定しておりまして...なんだかコーナーがごちゃごちゃになって来た(笑)。面白いコトになりそうです。でもジャズ映画特集って膨大な労力がかかるんで、しばしお待ちを...。




これでいいのだ





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