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97/12/07
第三回
バート・バカラックを
愉(たの)しむ
来日記念徹底研究



■ 名曲で辿るバカラック/バート・バカラック名曲早見表 ■


No 邦題 原題 オリジナル・シンガー ヒット・シンガー 個人的ベスト・テイク ディオンヌも
歌っているか
1 雨に濡れても Raindops keep fallin' on my head B.J.トーマス('70) B.J.トーマス B.J.トーマス Yes
2 遙かなる影 (They long to be)Close to you リチャード・チェンバレン('63) カーペンターズ('70) カーペンターズ Yes
3 ベイビー・イッツ・ユー Baby it's you ザ・シュレルズ('62) ザ・ビートルズ('63) エルヴィス・コステロ('84) ?
4 恋の面影 The look of love ダスティ・スプリングフィールド('67) セルジオ・メンデス&ブラジル'66('68) セルジオ・メンデス&ブラジル'66 Yes
5 愛を求めて What the world need now is love ジャッキー・デシャノン('65) ジャッキー・デシャノン ジャッキー・デシャノン Yes
6 恋よさよなら I'll never fall in love again クロディーヌ・ロンジジェ クロディーヌ・ロンジジェ クロディーヌ・ロンジジェ Yes
7 サン・ホセへの道 Do you know the way to San Jose ディオンヌ・ワーウィック('68) ボサ・リオ('70) ボサ・リオ('70) Yes
8 小さな願い I say a little prayer ディオンヌ・ワーウィック('67) ディオンヌ・ワーウィック アレサ・フランクリン('68) Yes
9 素晴らしき恋人たち Wives and lovers ジャック・ジョーンズ('63) ジャック・ジョーンズ パーシー・フェイス・オーケストラ Yes
10 ウォーク・オン・バイ Walk on by ディオンヌ・ワーウィック('64) ディオンヌ・ワーウィック フォー・キング・カズンズ Yes
11 アルフィー Alfie シェール('66) ディオンヌ・ーウィック('67) シラ・ブラック('66) Yes
12 何かいいことないか
子猫チャン
What's new pussycat ? トム・ジョーンズ('65) トム・ジョーンズ ピチカート・ファイヴ('93/'97) ?
(1997年12月/バート・バカラック来日記念/作成・定成寛/苦労したした)


 まずはここまでにしておきましょう。12曲、1ダース、区切りもいいや。選択基準はズバリ「絶対にみなさんもどこかで聴いたことがある曲」です。ホテルのロビーか、デパートのトイレか、はたまた大売出し中の商店街か、場所はわかりませんが、絶対にどこかで聴いたことがありますよ!それでは少々、解説を。

 「雨に濡れても」は最初にも書いた通り、70年の映画『明日に向かって撃て!』の挿入歌。懐かしいなぁ、一応、リアルタイムで聴いています。今はバカラックといえば「音楽好きのスター」って感じだけれど、昔は街中に流れていて、その名前も(ちょっと変わっていたし)ポピュラーでした。
 そうそう、当時住んでいた神奈川県逗子の海水浴場で、「やめてください」の放送を無視し、水上スキーで暴れまくる若者達を見て「あいつらバッカラックだね」と父親に言った記憶があるな(子供心に「キマッタぜぇ!」と思ったので、いまだに覚えているのだった)。小学校入学直後、71年ごろのことと思われます。ちょうどこの曲が爆発的に流行っていたころでしょう。クダラナイシャレに使ってすいません、バカラックさん。罪滅ぼしの意味で、30年後にこんなページを書いています(笑)。
 ちなみにこの曲、破滅的なバンドにも人気高し。古くはイカ天バンド「マサ子さん」、最近でもインディーズレーベル・殺害塩化ビニールの「猛毒」によってカヴァーされていました(どうでもいいよ、そんなハナシ・笑)。

 「遙かなる影」はカーペンターズの曲だと思っていたでしょう。実は違うんだなぁ、これが。私もちょっと驚きましたが、63年にアメリカのTV俳優リチャード・チェンバレンのシングルのB面としてリリースされたのが最初の様です。この曲はホントにいまだにポピュラー!自動車メーカー「サターン」のCMでバックに流れていますね(ちなみにこの曲に乗せたキャッチ・コピー「礼を尽くすクルマ」のナレータは細野晴臣氏ではないかと思うのだが?)。

 「ベイビー・イッツ・ユー」は曰く付きの曲ですね。ガールズ・ポップ・グループのシュレルズが歌ったのが62年のこと。これが全米8位というヒットを記録、それを聴いたビートルズがデビュー・アルバムでカヴァーする、が、最近の話題は94年の暮れにBBCでのスタジオ・ライヴからシングル・カットされたことでしょう。ちなみにTVCMでも流れていましたね。浅野温子が出ていたNECパソコンのCM。ちょうどWindows95が発売される時で、「ビートルズ-バカラック-95パソコン」という取り合わせに不思議な時代性を感じました。
 思い出深いところでは、コステロのテイクがアツかったな。コステロとバカラックの関係についてはのちほど詳しく。

 「恋の面影」、ジャッキー・デシャノンのオリジナルは全米7位にまでなったらしいけれど、日本じゃこれはセルメンですよ!「ブラジルのホレス・シルバー」といわれたピアニストのセルジオ・メンデスが結成した「セルジオ・メンデス&ブラジル'66」の人気たるや凄かった(最大のヒットはお馴染み「マシュ・ケ・ナダ」)。同じA&Mレコードであったということもあり、この他にも「愛を求めて」などもカヴァーしています。
 セルメン聴いて「これが”ぼさのば”かぁ」と子供心にドキドキしたもんだが、まぁ、今考えると「ボサ風ポップス」ってところかな?「サン・ホセへの道」も同様のサウンドでヒットをするんですが(これもものすごくヒットしたので覚えている)、ところがこれがセルメンの弟バンド「ボサ・リオ」の演奏だったんだな。判明したのはなんと2年前。30年近くセルメンだと思っていたのだった。セルメンとボサリオ、エド山口とモト冬樹みたいなものか?

 女性ヴォーカルものをまとめて。「愛を求めて」「恋よさよなら」は、「聴けば知ってる」の極致。「小さな願い」はディオンヌの持ち歌だが、バカラックをして「とても好きだな。彼女は違った道を辿って、違うアプローチをしている。それが素晴らしい。アレサは偉大だよ。ディオンヌのレコードよりも好きだというつもりはないが」と言わしめたアレサ・フランクリン盤もなかなかのものです。

 「素晴らしき恋人たち」は、パーシー・フェイス盤がとにかく素晴らしい!数年前のこと、よく晴れた土曜日の午前中に地元・湘南海岸を車で走りながらこれを聴き、あまりの素晴らしさに同乗者と共に声を上げてしまった。イントロから最高!お薦めです!
 「ウォーク・オン・バイ」も同じころソフト・ロックの名盤、フォー・キング・カズンズで良く聴きました。ぼわ〜んとしたソフト・ロック特有のアレンジとヴォーカルが、結構クセになります。ちなみにフォー・キング・カズンズは、総勢30名からなるアメリカの音楽一家(一族?)「キング・ファミリー」のキレイどころ4人をみつくろって出来たグループです。

 「アルフィー」はシラ・ブラックがいい。「この曲に最適の声を持ったブ○」と言われるシラ(写真を見たところ確かにちょっと○スである)、なるほどこの曲に関してはちょっとモタつくディオンヌより、力強いシラがいいですね。
 「何かいいことないか子猫チャン」はいい曲なのに!トム・ジョーンズ絶唱しちゃうんだよな(苦笑)。さすがは元・炭鉱夫、とんでもねぇリキミ。「かわいいヴァージョンが聴きたいなぁ」と思っていたら、我等がピチカート・ファイヴがやってくれました。93年6月放送のフジテレビ系音楽番組『WOOD』で、アコースティック・ラウンジ・ユニット「トーキョーズ・クーレスト・コンボ」をバックに名演を披露。長らく幻のテイクとされて来ましたが、96年10月発売の企画盤『グレイト・ホワイト・ワンダー』に収録されました。めでたしめでたし。
 ちなみに「子猫」の「子」の字はニンベンが付くのが正式なのですが、変換出来ないんですよ。無念。「子」で代用しています。






 優れた楽曲としてご紹介したいのが、もうすこしあります。決してポピュラーとはいえないかもしれませんが、是非、トライしてみてください。



■ バカラック・隠れた名曲一覧表 ■


No 邦題 原題 オリジナル・シンガー ヒット・シンガー 個人的ベスト・テイク ディオンヌも
歌っているか
1 マイ・リトル・レッドブック My little red book マン・フレッドマン('65) マン・フレッドマン マン・フレッドマン No
2 ボンド・ストリート Home James,
Don't spare the horses
サウンド・トラック('65) バート・バカラック ピチカート・ファイヴ('93) No
(Inst.)
3 カジノ・ロワイヤル Casino Royale theme サウンド・トラック('65) サウンド・トラック サウンド・トラック No
(Inst.)
4 ザ・ブロブ The Blob ザ・ファイヴ・ブロブス('57) ザ・ファイヴ・ブロブス ザ・ファイヴ・ブロブス No
5 ジャパニーズ・ボーイ Me Japanese boy I love you ボビー・ゴールズボロ('64) ピチカート・ファイヴ('94) ザ・ハーパース・ビザール('68) No
6 キャッチ・アズ・
キャッチ・キャン
Catch as catch can サウンド・トラック('65) サウンド・トラック No
(Inst.)
(1997年12月・こんなもの作るのサダナリしかいないって)


 60年代のサントラを中心に、有名ではありませんが、私が本当に好きな曲をピックアップしました。

 「マイ・リトル・レッドブック」は、もう、ダメ!大好き!新幹線の中でこれを聴いて思わず泣きそうになったことがあります(原因不明)。もともとマンフレッド・マンの大ファンだったところへ持って来て、バカラックの切ないメロディーとハル・デイヴィッドの最高の歌詞。「黄金の組み合わせだぁ!」なんて思っているのはきっと私だけでしょうが....。
 著作権の関係があるので、歌詞をそのまま載せるのはマズイかもしれませんが、おおまかに訳すと...



君がさよならを言ったすぐあとに、僕は小さな赤い手帳を取り出した

AからZまで調べて、街中の可愛い女の子を連れ出したんだ

でも僕は彼女達に君のことを話してばかりで

僕の小さな赤い手帳に載っている女の子じゃ

君のかわりにはならなかったよ

君の素晴らしい愛がなければ、僕はやっていけないんだ


...こんなストーリーが、フルートやオルガンを駆使したマンフレッド・マンのモッド・ジャズ・サウンドに載せて飛び出してくる。私が最も好きなバカラック・ナンバーです。
 ジャズ・シンガーのメル・トーメがロックに挑戦した珍しいテイク(これもまぁまぁ)や、60年代のアメリカのバンド、ラヴによるサイケ・プログレ・ヴァージョン(これはちょっとツライ)もありますが、オリジナルが一番だと思います。胸がキュ〜ンと締めつけられるのだ!
 あとで書きますが、またこの曲、千葉工場時代に千葉駅そばの中古レコード店で輸入アナログ盤(『何かいいことないか子猫チャン』のサントラに収録)で買って「体験」したりしたもんだから特に印象深いのかもしれない。アナログの音質、たまらないものがありますからねぇ。20代後半の「多感」な時期だったしね。

 「ボンド・ストリート」にはちょっとした思い出があります。CDで「単独で」聴いていたころにはまぁ「面白い曲だな」くらいだったのですが、これが、映画で、スクリーンで観ると(聴くと?)最高!思わず席の上で飛び跳ねたり、喝采したりしたくなりました!「やっぱりサントラは映画の為にあるのだな」と当たり前のことを痛感。「映像付き」をお薦めします。
 あ、これにも例の「WOOD」ヴァージョンあり。これこそピチカート一世一代の名演だったのですが、CD未収録。至急発売求む!

 「カジノ・ロワイヤル」はみんな聴いたことあります。ごく最近、フジテレビ系の旅行番組「メトロポリタン・ジャーニー」のテーマ曲として使われていました。「この曲なんだろう?」と思った方も多かったのではないでしょうか?あれオリジナル・ヴァージョンそのものでしたよ。
 この曲は侮れない!親しみ易いメロディー、コミカルなアレンジ、表情豊かなトランペットがリードして、チェンバロのような不思議な音も入っている、そしてドラムは大胆という、もう「これぞバカラックサウンド」という感じなんだな。ホント、こんなにハッピーな音楽を創る人間がいるなんて嬉しくなってしまいます。

 しかし「通」に言わせると「『ザ・ブロブ』こそ後のバカラック・サウンドを予感させるものだ」そうだ。「こんなこと言うんだよな『通』って人種は」と思っていたが、今回集中的にバカラックを聴いたところ、なんとなく、その意見もわかって来ました。
 親しみ易いメロディー、コミカルなアレンジ、表情豊かなサックスがリードして、チェンバロっぽい不思議なギターも入っている、そしてリズムはメキシコ風という、たった今どこかで読んだような要素が全部含まれているのだ。ライターの福原武志氏曰く「(この曲を聴いて)バカラックは1958年にはもうバカラックであった」に賛成します。ちなみにバンド名の「ザ・ファイブ・ブロブス」はバカラック本人の変名。全ての楽器をひとりで演奏した多重録音の元祖であることは先程説明した通りです。
 そしてこの曲、今回のコンサートでも演奏されて(!)ちょっとしたエピソードがあるのだが...それはのちほど。

 「ジャパニーズ・ボーイ」は旬の曲ですね。我等がピチカート・ファイヴが一躍有名にしてくれました。もっとも僕らの世代は、バーバンク・サウンドの必修科目「ハーパース・ビザール」のヴァージョンで昔から知っていましたが。マーティン・デニーのサンプリングで始まるピチカート・ヴァージョンはバカラックご本人もお気に入りとか。ピチカートとハーパース、ハウスとソフト・ロックという全く異なったテイストですが是非、両方をお聴き戴きたいと思います。

 「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」、この曲のことを書いてあるページなんて、世界でもここだけだろうなぁ(笑)。前述の『何かいいことないか子猫チャン』の最後の曲なのですが、「お、そろそろ終わるな」と思った瞬間飛び出して来たイキのいいインスト・オルガンにノック・アウトされてしまった。わずか1分14秒ですが、あぁ、これも切ない、胸キュン!(数年前に我が家の留守電のBGMも務めていたのであった)。






 名曲紹介はこのへんまでにしておきましょう。この他には「遠い天国」「マイケルへのメセージ」など、60年代にディオンヌか歌ってヒットしたナンバーと、60年代初頭、ジーン・ピットニーやザ・ドリフターズに書き下ろしたものがあるのですが(いずれもベスト・テン以内に入っているんですよ!)、それらについては次のCDレヴューで触れます。

 タイヘンお待たせしました。いよいよCDレヴュー、バカラック購入ガイドです。





もうすっかり詳しくなっているのだ
でもタイトルだけなのだ
クリックしてCDを選ぶのだ




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