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98/02/15 第四回 入魂企画 はじめてのJAZZ 世界一わかりやすいジャズ入門 楽器特集第一弾 バリトン・サックス魅惑のせかい |
■ 日本のバリトンはここで聴け ■
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1.'スカパラ登場' Tokyo Ska Paradise Orch. (ESCB1052 Epic sony) 1990 |
2.'LIVE' Tokyo Ska Paradise Orch. (ESCB1132 Epic sony) 1991 |
3.'Tokyo Ska Paradise Orch.' Tokyo Ska Paradise Orch. (ESCB1113 Epic sony) 1990 |
4.'A million dollar band ' The Thrill (TOCT-6477 Toshiba) 1992 |
5.'Funky Business' The Thrill (TOCT-8371 Toshiba) 1994 |
6.'Birth of the Groove' Palladium (GH1503 Control Magnet) 1993 |
それではここで日本の素晴らしいジャズ・バリトンを...と行きたいところなんだけど、いないなぁ。なんでだろう。あれだけライヴを観ているのに、バリトン入りのコンボに出会ったことは一回もありません。唯一、宇梶昌二さん(1948-)という方が'86年にリーダー・アルバムを出していらっしゃるのですが。あとは元・ティポグラフィカの菊地成孔(ts,ss)がたまーにバリトンも吹くわな。 実は今、最もバリトンが元気なのは、純粋ジャズではなくて、なんつーんだ?これ?渋谷系ビッグ・バンド?(苦笑)の世界なんです。お茶の間でもお馴染みとなった、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦選手は多分「日本一テレビに出ているバリトン奏者」でしょう。マジな話で、彼を通じてバリトン・サックスを知ったという世代も登場しているのではないでしょうか。 早稲田のサークルではヴォーカルをやっていたという谷中選手、「バリトン・サックスがよく似合う」とひとこと言われ、その気になって購入。猛練習の末、スカパラ加入、らしい。なかなか研究熱心で、かつて持っていたFM Yokohamaの番組ではこのページみたいな「バリトン特集」なんてのも企画していました。 アルバムは初期の3枚がお薦め。もうウチのCDは聴き過ぎでボロボロです(笑)。メンバー・チェンジを重ね、どんどんメジャーになり、洗練されてゆくスカパラですが、なんといってもこのころの、ザラっとしたストリート感が好きだなぁ。私もハマってたよ、1週間に2回観たりしてました(笑)。 聴きどころを一気に、1では「ストレンジ・バード」の裏打ち、「子象の行進」のユニゾン、「ゴールデン・タイガー」の低音パートがイイ。2の「ショット・イン・ザ・ダーク」の重厚感もバリトンあってこそ。「ラッキー・セヴン」後半(「ギロ」という曲だが、クレジットされていない)もバリトンのリフが効いています。そしてかつてはインディーズからのアナログ盤であった3ではなんといっても「Just a little bit of your soul」!バリトンなくちゃ成り立たないよ!(この曲、サダナリの十八番でもあります)。 とにかくスカパラからあのバリトンの裏打ちと、低音のユニゾンを抜いてしまったら、なんと色気のないサウンドになってしまうことか。スカパラってのは実は谷中が支えてるんだぞ!たぶん。 |
谷中敦とそのバリトン・サックス イカス!シビレル! 小林旭とのセッションでは レコード大賞出演も |
続いてはミリオン・ダラー・バンド、ザ・スリル。ここ数年はこっちの方にハマってますな。軽く10回は観ている。ちょっとファンの年齢層が高いのだ。スカパラはTVCMなどで御存知かもしれませんが、スリルは説明しないといけないかな。 結成は'91年ごろ、確か今はなき浜松町インクスティックのオープニング・パーティーがデビューじゃなかったかな。現在総勢15名。スカパラよりもちょっとだけ多いのだ。メンバーは元じゃがたら、ミュート・ビート、ブルー・トニックといったロック畑出身と、岡部洋一(小野リサ・バンド、向井滋春ブラジル・セッション)、関島岳郎(コンポステラ)といったジャズ畑の実力派が入り交じっています。 バリトンはスマイリー選手。かなりのベテランで、大人の味を出しております。衝撃のデビュー作、4はバリトンの良く効いた名盤。「ザ・スリルのテーマ」、「ア・ビッグ・マン・アンダーグラウンド」あたりで、イヤって位にバリトンが聴けます。もう一枚挙げるならば、'94年発表の5がお薦めか。いきなりバリトンから始まるんだもんなぁ。そういえば、'93年のライヴでバリトンがメインのすげーカッコイイ曲ありましたが、あれはいつCDに入るのでしょうか? ラストはパラディアム。うーん、ところがここが資料がナイのだ。スカパラ、スリルに続く第三のグループで、バリトンがソロを吹きまくったりして、とても気になる存在なのだが...。実はインディーズのアナログ盤6を一枚持っているだけで、生を観たことがありません。情報求む!生を観た、ファンである、メンバーであるという方はメールをこちらまで! |
■ こうなりゃついでだ!ロックでバリトン ■
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7.'Girl groups hits collection' Various(R-4A0013 Della) 1994 |
8.'Back to Oakland' Tower of power (WPCP-3674 Warner) 1974 |
9.'cure for pain'Morpine (VACK2001 RYKO) 1993 |
すいません。ジャズじゃないです。最後にロック界に於けるバリトン・サックスの使われ方について一考察(笑)。 '50〜'60年代はバリトンの黄金期でしたなぁ。数あるガール・ポップ・ヒットでバリバリ使われておりました。最も目立っていたのがクリスタルズの「ダ・ドゥ・ロン・ロン」でしょうか。「どこかで聴いたことがあるなぁ」とお気づきの方は鋭い!音楽評論家・能地祐子氏のドメイン名、DaDooRonRon.comはここから採られています。もう全編鳴りまくり。間奏では豪快なアドリブ・ソロまでやっております。 同じくクリスタルズでは「ゼン・ヒー・キスト・ミー」なんて曲でも8分音譜でずーっと♪ぶぶぶぶぶぶぶぶと鳴ってますね。モータウン・レコードの大看板、ダイアナ・ロス&スプリームスの曲「涙でお願い」でもバリトンの低音が効いています。まだまだいるぞ!ダーレン・ラヴの「ア・ファイン・ファイン・ボーイ」もバリトン・ソロはじける名曲なり。 さて上記4曲中モータウン在籍のスプリームスを除く、3曲は同じ人間がプロデュースしています。「あ、もしかして...」とお気づきの方はエライ!熱心な「サダ・デラ」読者か、かなりのロック通ですね。そう!これらは奇才フィル・スペクターの手によるものです。スペクターについてはクリスマス期間限定ページに書きましたが...実はあのページまだあります(「限定」とか言ったけど、もったいなくて消せなかったんですよ)。もう一度観たい方、観たことのない方はこちらからご覧ください。 もしかしたらスペクターはひとつのシンボルとしてバリトンを使っていたのかもしれません。いかにも管楽器臭い、あのサウンドが好きだったのでしょう。 この傾向は他のアーティストにも見受けられ、このころの曲を聴いていると「お、バリトンだ!」ということがしょっちゅうあります。サム&デイヴ、レイ・チャールズ、ウイルソン・ピケット、アイク&ティナ・ターナー、アレサ・フランクリンなどなど、レコード棚にあるヤツを引っ張りだして、改めて聴き直すと...どうですか、妙な低音が聴こえてきましたか? 7は冒頭に挙げた4曲を始め、ガール・ポップのマスト・アイテムが18曲も入った名コンピ。実は大井町駅の通路で\1000で買ったんですけどね(笑)。しかし良く聴くと超有名曲「ビー・マイ・ベイビー」(ロネッツ。これも当然収録)にもかすかにバリトン入ってるんだね。もうちょっと大きな音でミキシングしてくれたら、バリトンも有名になったかもしれないのに(笑)。 '70年代もバリトンさんは元気でした。ロック・バンドにブラス・セクションが加わった「ブラス・ロック」のムーヴメントが起こったのです。 チェイス、ブラッド・スウェット&ティアーズといった「高音寄り」のブラス・ロック・バンドは置いといて、ここで注目は...これしかないでしょ!タワー・オヴ・パワーです!ふふふ、シカゴが来ると思ったでしょう。あまい、あまい。子供はシカゴ、大人はタワー・オヴ・パワーですよ。アルバムは「一家に一枚の名盤」(by萩原健太氏)の8『バック・トゥ・オークランド』でしょうか。全編名曲ばかりですが、中でもバリトンの’ドクター’ことスティーヴ・クプカを大フィーチャーした「スクィブ・ケイクス」が聴き物です。 30年近いキャリアを誇り、「ブラス・ファンク」という独自のジャンルをつくり出したタワー・オヴ・パワーは、なんと現在でも活動中。忌野清志郎とのセッションを聴いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。つい数年前にも来日公演を行っていました。 '80年代はイギリスのツートーン・スカ・バンド、マッドネスなどが使っていましたが、ちょっと廃れていました。ニューウェイヴでバリトンって、ありそうでなかったな。短小軽薄な時代の雰囲気にバリトンの重低音は合わなかったのかもしれません。ヒカシューとかノー・コメンツとかスポイルとか、サックスいたけどアルトだったもんねぇ...。 そして'90年代、オルタナティヴ・ロックの時代にとんでもないバンドが現れた!バリトン+二弦ベース+ドラムスという「超低音バンド」(笑)。モフィーンです!'90年代初頭にボストンで結成されたこのバンド、本国アメリカでも「Low Rock」と呼ばれているようです。日本でのデヴュー・アルバムとなる9では、バリトンにワウを掛けた「オール・ロング」なんて曲もあり、かなり強烈です。まぁオルタナですから、ちょっと異端ではありますが、音楽的なレヴェルはかなり高いですね。'94年と'97年に来日公演も行っていますが...しまったなぁ、やっぱり行けば良かった。 しかしオルタナ系も面白いことになってきたなぁ。歪んだギターが鳴り響いていたグランジ期が推移して、このモフィーンやドラム+ベース+ピアノのベン・フォールズ・ファイヴなど、ギターレス・バンドが活躍中。いいねぇ、楽しいねぇ。そういえば、サダナリ最愛のオルタナ・バンド、ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツのジョン・L君もキーボードとの持ち替えでバリトンを吹きますね。ライヴでもやってたな(CD、VIDEO、LIVE完全制覇。I love you!!)。 ともあれ、オルタナの波に乗ってバリトン・ロックも復権中。めでたしめでたしである。 |
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■ 最後に−バリトン、忘れないでね! すいませんねぇ、ヘンなページになってしまって(苦笑)。楽器講座、ジャズにポップス、スカやファンクまで、ちょっと詰め込み過ぎの感もありますが、全てを繋いでいるのはただひとつ、バリトン・サックスであります。 「はじジャズ」の枠を通り越して、「サダ・デラ」全コーナー共同企画って感じがしますな。まぁ、もともとひとりでやってるんですけどね(笑)。これでバリトンの出てくる映画があれば完璧だったんだけど(笑)。 冗談はこれくらいにして、いかがだったでしょうか。バリトン・サックス、今までは意識されていない楽器だったかもしれません。しかし、そんなマイナー楽器にもこんなに広大な宇宙があり、様々な人達が係わっているという。ちょっと不思議な感じでしょう?不肖サダナリ、いやバリサダもその一人であります。しかし、やれやれ、あの重たいヤツと一生付き合って行くのかぁ...。 かつてはイカ天の辛口審査員で、泉谷しげるのバンドなどで活躍するベーシストの吉田健が面白いことを言っていました。「みんなベーシストをバカにするけど、本当に音楽の好きな人はあのベース・ラインがグッ、グッとハマって行く感じが好きなハズだよ」さすがは低音楽器のプロ、名言ですなぁ。名盤『クールの誕生』におけるマリガンも、今をときめくスカパラ・谷中選手の裏打ちも、その通り、グッとハマっております。気持ちいいのだ! バリトン、忘れないで下さいね。ジャズでロックで、そして演歌で、こもった低音が出て来たら思い出してやって下さい。ちょっと大きくて無骨だけど、かわいいヤツなんです。 |
Mulligan 1953
■ 番外編・バリトン・ニュース ■
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■ 次回予告 ■ 新入生応援企画 「トウキョウ・ジャズ・スポット・その1」 さて次回は再び屋外編 リクエストの多かった、東京のジャズ・スポット案内です ジャズ・クラブはもちろん、ジャズ喫茶、ジャズCDの穴場など トウキョウ・ジャズ・ライフに欠かすことの出来ない情報を ど〜んとお伝えします 乞うご期待! |