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97/10/26
第三回
入魂企画
はじめてのJAZZ
世界一わかりやすいジャズ入門
実践編 「横濱JAZZプロムナード '97」
完全レポート


■ 実践編 「横濱JAZZプロムナード '97」 完全レポート ■




タイム・テーブル入りプログラム
出演者も会場もあまりに多過ぎて
本になっているのだった

入場券替わりの
フリーパス・バッヂ
10月10日分
これさえあれば
どこでも
フリーパス
こちらは11日分
これを付けた人が
横浜中に
あふれた


■ジャズ浸りの2日間・これは天国か、はたまた地獄か....

 行って参りました「横濱JAZZプロムナード '97」。日にちは10月10日、11日の2日間。時間は両日とも昼の12時から夜11時ごろまで。つまり2日間で正味22時間、ジャズ浸りだったわけです。ふう〜。

 まぁフツーのヒトならば途中で休んだり、気に入ったセッションだけつまみ食いしたりして観るのでしょうが、私はフツーじゃないので、移動と牛丼食ってるとき以外は全てライヴを観ていました。私が廻ったのは、スウィングあり、ラテンあり、フリーありの全11セッション、曲数は....わかりません、たくさん演ってました。のべ出演者は....これもわかりません、たくさん出てきました。

 ちょっとアタマが溶けてますが、まずはこのイヴェントの説明から。「街全体をステージに」を合言葉に5年前に始められたこの「横濱JAZZプロムナード」、高秀横浜市長を実行委員会名誉会長に据えて、今年は151社の協賛、22社の後援、12団体の主催、横浜市を含む4団体の共催で行われました。まぁ間違いなく「日本最大のジャズ・フェスティヴァル」といえるでしょう。
 運営が型破りなら、プログラムも型破り。11のホール、17のジャズ・クラブで合わせて137セッション、国内外からの出演者は合わせて....これは本当に数えきれません。数百人にのぼるでしょう。さらに市内の到る所で、アマチュア・バンドの演奏も行われており、2日間、横浜中がまさにジャズ一色に染まっていました。サラっと書いてしまったけれど、中心部に17もジャズ・クラブがあるなんて、ちょっと凄いと思いませんか?横浜ってやっぱり「ジャズの街」なんだな。こんなイヴェント、横浜以外では難しいかもしれませんね。
 昨年の観客動員数はなんと4万5千人、5周年を迎えた今年は5万人を目標にしていたそうです。とにかくスゴイ規模だよ!

 システムは1日4000円、または2日通し7000円のチケットを買い、当日上記のバッヂに交換してもらう。同時にプログラムと地図も渡され「あとは勝手に観てちょうだい。どこでもだれでもフリーパスよ」という夢のようなもの。横浜在住ウン十年の趣味の良さそうな老夫婦から、ちょっと変わったデートを楽しむ若いカップルや子連れの若夫婦、そして会場間を必死の形相で疾走するちょっとアブナイジャズ・ファンまで(これワタシです)、あらゆる人たちが「ジャズ」に接し、満喫していました。う〜ん、こう書くと、なんとも、イイねぇ(ニヤニヤ)。

 私は去年に続き2回目の参加。それまでは仕事の関係で観れなかったんです。無駄な時間が出来てしまった昨年の反省を踏まえて、今年は移動時間に経路と手段、会場の構造などを考慮しつつ、事前にスケジュールをみっちり立てましたよ、ふっふっふ。おかげで前述の通り、移動と食事(しかも早喰い)以外は全てライヴ!でした。
 それでは多分、日本一詳しい「横濱JAZZプロムナード '97」完全レポートのはじまり、はじまり。今回は写真も撮ったよ〜!




ちょっと見にくいけどまずは参加者全員に渡された地図から
赤いところが今回行ったところで左から

ドックヤードガーデン、FIRST、エアジン、横浜市開港記念会館、ジャズメンクラブ、イギリス館

JR京浜東北線(根岸線)で3駅、左から桜木町・関内・石川町、横幅3kmぐらいの範囲です




■ 1日目・10月10日(休)はこれを観ました ■


順番 時間 アーティスト 会場 メンバー ジャンル 写真
撮影
12:00〜13:20 ジョージ川口(ds)NEWビックフォー+1 開港記念会館 中村誠一(ts)、岡野 等(tp)、市川秀男(p)、水橋孝(b) ハード・バップ ×
13:40〜14:00ごろまで 酒井俊(vo)&三好功郎(g)、鬼怒無月(g) 開港記念会館 酒井俊(vo)、三好功郎(g)、鬼怒無月(g) ヴォーカルとギター・デュオ ×
14:50〜16:10 大友義雄(as)クインテット イギリス館 村田陽一(tb)、西直樹 (p)、加藤真一(p)、岡田佳太(ds) ハード・バップ ×
16:30ごろから16:50 谷口英治(cla)SWING JAZZ クインテット 開港記念会館 竹田直哉(vib)、岸 三晃(p)、安力川大樹(b)、島田忠男(ds) スウィング ×
17:10〜18:30 向井滋春(tb)ブラジル・セッション 開港記念会館 城戸夕果(fl)、続木徹 (p)、八尋洋一(b)、岡部洋一(per)、今福賢司(per) ラテン・ジャズ ×
19:00〜23:00 宮之上貴昭(g)&スモーキン FIRST 三木俊雄(ts)、南野ようせい(p)、山口雄三(b)、井川晃(ds) ハード・バップ


メイン会場となった
横浜市開港記念会館
この中にホールがある

知る人ぞ知る
ニックネームは
「ジャック」
開港記念会館ではジャズ・エキシビションも
今年のテーマは「日本と世界のジャズ雑誌」
あっと驚く貴重な資料がぞろぞろ


■ 10日 12:00〜 ジョージ川口NEWビッグフォー+1 [開港記念会館]

 なんとなく、今年も、オープニングで開港記念会館に行ってしまった。12:00と同時に市内8会場で一斉にスタートしていて、別にどこで観てもいいんですが、やはり「ジャズ・プロムナード」といえば開港、という感じなんだな。

 昨年の松本英彦に代わり、今年は昨年2日目のトップバッターだったジョージ川口のコンボでスタート。しかしムチャするね、このオトッツアンも!もう70歳を過ぎているハズなのに暴れる暴れる。「世界最強のドラマー」といわれていたバディー・リッチの様な、轟音とどろくハデなドラミング。なるほど、オープニングには最適ですね。「お祭りの始まり」という感じがタップリしましたよ。
 
 しかしこのコンボも不思議な味がありますね。全員がバラバラに巧い。サックスの中村誠一はきれいな音色、正確な音程で徹底的に聴かせるタイプ。それでいてポイントではしっかりキレル。いいねぇ、大好きです!ペットの岡野等は油が乗り切って、もう何でも吹けてしまうって感じだったな。今のところ向かうところ敵なしですが、若手・原朋直が急激に追いかけて来てますぞ。そして市川秀男、いいピアノ弾く!見た目はピアノ・バーのオジサンのようですが、いやぁ、ちょっとニューオーリンズがかったような黒いピアノ弾かせたら絶品ですね。今回のステージでは、ピアノがピックアップされるシーンがなかったのはちょっと不満です。とにかく気になります。今度、市川バンドをゆっくり観たいと思いました。

 曲は「ジョディー」「そよかぜと私」「ラウンド・ミッドナイト」など(こう書くと脈略ねえなぁ、楽しかったけど)、そして今年も演りましたジャズ・ロック!「サイド・ワインダー」。リー・モーガンに迫る白熱のペットを岡野が、ジョー・ヘンダーソンのような聴かせるテナーを中村が吹きましたが、はっはっは、ドラムは思いっきりヨコノリで「ロック」って感じじゃなかったな。まぁ、これはご愛嬌ですな。
 最後の曲「ドラム・ブギ」の前には「この曲のドラム・ソロに、ジョージ川口の52年のジャズ生活の全てが含まれています」という謎のアナウンスが入りました。「ジョージ川口と言えば『ドラム・ブギ』、『ドラム・ブギ』といえばジョージ川口、それでは行ってみましょう!」ドタドタドタ....確かに凄かったです。一緒に観ていたジャズ仲間K君(某自動車工場勤務・夜勤明け4時間睡眠)は気の毒にも52年の重みに耐えかねて、ダウンしてしまいました。20代後半の若者を打ちのめす、70歳過ぎのドラム乱打、恐るべしジョージ川口!

 そのK君の「関内小ホールに出ているアブラハム・バートンってのが凄いサックス吹きますよ。キャノンボール・アダレイの再来と言われているとか....」という情報から、実はジョージ川口を途中で切り上げて、移動するハズだったのですが、そのパワーに押されて結局最後まで観てしまいましたよ。


■ 10日 13:40〜 酒井俊&三好功郎、鬼怒無月 [開港記念会館]

 ジョージ川口に続き、同じ会場で女性ヴォーカルの酒井俊。三好功郎と鬼怒無月(きど・なつき)という注目の若手ギタリストが揃うと聞いて、楽しみに観ていたのですが....。全く理解出来ませんでした。

 1曲目、細野晴臣もカヴァーしているホーギー・カーマイケルのエキゾツック・ナンバー「香港ブルース」は面白かった。ギターの2人が、ジャズとブルースの間を行ったり来たりして、心地よい浮遊感。ところが....「蝶々夫人」の日本語の替え歌とか、唐突な「アヴェ・マリア」とか、残念ながら私にはその良さも、プレイすることの意味もわかりませんでした。特に日本語の歌詞の扱いが雑な気がしたな。これはとても気になった。

 演奏前に曲にまつわるエピソードを話していましたが、本人が演奏したい曲と、オーディエンスが聴きたい曲とは別なものなのではないでしょうか。以上、あくまで個人的感想ですが。ファンの方がいらしたらごめんなさい。


■ 10日 14:50〜 大友義雄(as)クインテット [イギリス館]


10日16:10ごろ
大友バンド終了直後
会場のイギリス館は由緒ある洋館
そんなところにものすごい人出

そして抜けるような青空


 酒井バンドを途中で抜けて、市営バスで10分程の「港の見える丘公園」へ。公園隣の「イギリス館」でアルトサックスの大友義雄を観ました。

 ここが、ちょっと、驚いた。本当に単なる洋館。一応「ジャズ・プロムナード」の表示は出ているものの「ホントにここで演るの?」としばらくは信じられませんでした。
 中に入っても疑いは晴れず。30畳くらいの広間を2つ、タテに繋いでサロン・コンサート風にしていたんですが、天井にはシャンデリア、窓からは自然光。「大友っていったらメチャメチャハードだぜ。こんなお上品なところで、暴れちまうのかな?」。

 しかし、しばらくしてあることを思い出しました。ん、こんな洋館でジャズ、どこかで観たぞ....。そうだ!映画『真夏の夜のジャズ』のリハーサル・ルームだ!それを期に、急にウキウキしてしまった単純なサダナリであった。そしてこの場所は、PAなし、ベースだけ小さなアンプを通していましたが、サックス、トロンボーン、ピアノ、ドラムは全て生音。映画をご覧になった方、本当にあんな感じでしたよ。

 メインの大友は体格は小柄でナット・アダレイ風、演奏は大暴れのキャノンボール・アダレイ風。なんだか「ひとりアダレイ兄弟」のような人でした。しかしブロウしまくり!汗びっしょりになって、巨大な音量で、超絶フレーズを吹きまくっていました。ブロウ好きな私はあっというまに引き込まれてしまいましたよ!
 ピアノの西も凄かった。来場所で序二段優勝くらいならば十分狙えそうな、巨体を利しての叩きつけるようなプレイに観客の興奮が明らかにわかりました。ソロの途中の鍵盤を右に駆け上がるフレーズで、勢いあまって鍵盤のないところまで手が伸びてしまう一幕も。
 しかしこの西といい、ラテンを弾かせたら日本一の平田文一といい、ピアノは巨漢のほうが有利なんじゃないかな?ピアノが「打楽器」であることを再認識したセッションでもありました。

 実はもうひとり注目のメンバーがいました。トロンボーンの村田陽一です。管楽器集団「ソリッド・ブラス」を率いて、今や大学ジャズ研あたりの金管奏者には人気ナンバー1。私は今回初めて生で観たのですが....意外に地味でしたね。大友が暴れ過ぎていたせいもあるのかもしれませんが、ソロも「そつなく」まとまっており、やはり「ブラス・セクション、スタジオ系の人なんだなぁ」と思いました。
 まぁ、そんな彼のバランス感覚のお蔭で、我々はロック系の、例えばピチカート・ファイヴの心地よいブラス・アレンジを聴くことが出来るわけなんですが。ブラスが目立ち始めたここ数年のピチカートのアルバムでプレイしているのが彼、村田陽一で、なかでも'96年の『ロマンティーク96』ではホーン・アレンジャーとして重要なポジションを占めていました。「なるほど、この人がアレを吹いていたのか」と2mくらいの至近距離からじっくり観察してしまいました。


 バスで来たので、バスで帰りました。\210払って再び開港記念会館へ。そろそろ陽が傾き始めて、夜の部へと移って行きます。10日の残り3セッションは次のページにて。
 お馴染みバカボン・パパをクリックして下さい。次のページ、ちょっとイイ感じの写真がありますヨ!



これはほんのウォームアップなのだ
面白くなってくるのはこれからなのだ
次に行くのだ





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