99/12/20
第五回
ベストアルバム
1990-1999

Selected by Sadanari Deluxe







− ロマンスの神様の年に、イースト・コーストの超ベテランが−




Future Listening !
Towa Tei
FLCG3004 (gut/FORLIFE)


■ クラブ・サウンドの金字塔、'90年代の名盤 [ TECHNO]

 テイ・トウワがソロ・アルバムを発表。一体どんなものになったのかと聴いてみると...いやぁ、カッコイイっす。
 ディー・ライトの様なダンス・ミュージックかと思ったら、更にひとヒネリもふたヒネリも効いていた。複雑なリズムに、わざと音質を落としたシンセ、ボッサもあればラーガもある。アイディア満載のこのアルバムは間違いなく「'90年代の名盤」のひとつだ。まさかテクノで「バトゥカーダ」(マルコス・ヴァーリのボッサの名曲。'68年発表)を演るとはなぁ...感服でした。

 2曲目「Technova」は'93年発表の清水靖晃(ts)&ザ・サキソフォネッツの名盤『タイム・アンド・アゲイン』に収録された「靴の歴史」をモチーフにしており、このテイ版リメイクには清水本人も参加している。
 同様に7曲目「Sun of Bambi」は立花ハジメとテイ・トウワのコラボレーションによる「BAMBI」('91年)のリメイク。私は偶然に元の2枚も買っていたのだが、うーん、このリアレンジには唸った(オリジナルはいずれも地味〜な感じ)。あの曲を、ここまでクールかつハードにしてしまうとは...。

 最新アルバム『Last Century Modern』('99年)ではちょっとお疲れ君だったテイ君。十分休養して、またアイデアたっぷりの名盤を聴かせて欲しいものだ。




TEENAGE JAZZ
THE PLANOTONES
RG130 (LaPlano)


■ 真夏に買った、至福のアルバム [ ROCK ]

 この'94年、神奈川県逗子市と鎌倉市付近で超局地的に"フィフス・アヴェニュー・バンド"リヴァイヴァル・ブームの嵐が吹き荒れた。要するに逗子の私と鎌倉の友人と、2人で以上に盛り上がっただけなんですけど(笑)。2人だと"マイ・ブーム"じゃなくて、"アワ・ブーム"とでも言うのだろうか?ともかく、'68年から'70年のわずか3年だけ活動し、バンドの名前を冠したたった1枚のアルバムを残して消えたこのバンドに、夢中になっていたのだ。

 プラノトーンズは元・フィフス・アヴェニュー・バンドのマレイ・ウエインストックや、元・ジェイ&アメリカンズのケニー・ヴァンスを中心とした4人組のヴォーカル・グループ。この『ティーンエイジ・ジャズ』は彼らのライヴ盤だが、"La Plano Recrds"なるところからの発売で、どうやら私家盤らしい。私は東京・青山のビリーヴ・イン・マジックで購入。通販の店なのに早く聴きたくて事務所まで直接買いに行ってしまった(笑)。猛暑が騒がれた'94年8月の暑い夏に、汗を拭きながら出掛けて行ったのが懐かしい。
 音楽評論家の能地祐子さん(ヴォーカル・グループ&イタリヤ系男性狂)に薦めて、能地さん狂う、なんて出来事もあった。あとにも先にも、プロの評論家に音楽を薦めたのはこの時だけだな(笑)。

 大好きな「アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー〜瞳は君ゆえに」も収録(オリジナルは言わずと知れたザ・フラミンゴス)。「人は何故、夕方になるとヴォーカル・グループを聴きたくなるのか?」などという命題も議論していた(答えは「FENで良くかかっていたから、その影響」。たぶん)。土曜の夕方にお薦めしたい超名盤である。現在は追って作られたスタジオ盤が入手可能らしいです。




small good thing
PETER GALLWAY
ALCB-3011 (ALFA)


■ 東海岸を知る、硬質な一枚 [ ROCK ]

 それにしてもこのへんのサウンドというのは何故「土曜日の夕方」が似合うのだろう。前出のプラノも、このゴールウェイも。
 ピーター・ゴールウェイも元・フィフス・アヴェニュー・バンドのメンバー。フィフス解散後は一旦西海岸に移り"オハイオ・ノックス"を結成。名盤『オハイオ・ノックス』('71年)を残している(注・オハイオ・ノックスはゴールウェイのニックネームでもあり、同アルバムは彼のソロという見方も可能である)。
 そのゴールウェイの最新アルバムが、この『スモール・グッド・シング』である。しかし、こう新作が立て続けに出たら、そりゃにわかに盛り上がってしまうよね(笑)。

 サウンド的にはAORとも、ソフト・ロックとも違う、ニューヨーク・ロックとでも呼べばいいのかな。巧く言えないがこのソリッドな感じが「東海岸」なのだろう。
 同じ頃、元・ラスカルズのフェリックス・キャバリエもソロを発表したが、そちらはシンセなどもピーピーと鳴る作品で、結局買わなかった。対照的にこのゴールウェイは「うむ、納得」という名盤。こういうロックを聴きながら、歳をとって行きたいと思った。




dancin in the street
SOUL BOSSA TRIO
VICCL-587 (Victor)


■ ジャズ・ファンの知らない、日本のジャズの名盤 [ JAZZ , SOUL BOSSA]

 東京パノラマ・マンボ・ボーイズのパーカッション、ゴンザレス鈴木が"パノ・マン"を辞めて再登場。どんなことを演っているのかと聴いてみると、いやぁ、一転してクールでヒップなホンキのジャズ・コンボなのだった!
 デビュー・アルバム『ア・テイスト・オヴ・ソウル・ボサ』('94)はあまりにも有名すぎるハード・バップ・イデオムが乱発されていて、コアなジャズ・ファンにはちょっとチープに感じられてしまうかもしれないが、このセカンド・アルバム『ダンシン・イン・ザ・ストリート』は素晴らしい。曲はまさに"ソウル・ボサ"。彼らのオリジナリティに溢れた快作となった。

 渋谷系人脈の人達ゆえ、ジャズ・ファンには馴染みが薄いかもしれないが、文字を太字にしてお薦めしたい大傑作。同年12月の渋谷・クラブ・クアトロでのライヴは'90年代のベスト・ライヴにも入るものであった。
 その後も何枚か発表しているが、とにかくこの『ダンシン・イン・ザ・ストリート』がお薦め。こういうアルバムをジャズ・ファン、ロック・ファンに薦めるために、ホームページをやっている様なものだ。




十万回のなぜ
フェイ・ウォン
POCP-1410 (POLYDOR/CINEPOLY)


■ '90年代に最も惚れた女性ヴォーカル [ ROCK ]

 大きな瞳と、綺麗な輪郭に惹かれて、CDを買った。中国語圏の女性ヴォーカルは、それまではサンディ・ラムのファンだったのだけど...サンディなんてもうどうでも良くなってしまった(笑)。輸入CDを買い漁り、輸入のライヴ・ヴィデオも買い、そしてタイミング良くウォン・カーワイの映画『恋する惑星』に主演。もちろん観た。熱狂。いやぁ、惚れた!今でも、惚れている(笑)。

 フェイフェイの、あ、いや、フェイ・ウォンの音楽でシビレるのはなんといってもそのヴォーカルだ。やっぱり、アジア人同士なんだなぁ。あの力強い発声と、歯切れの良い発音が本当に快感である。欧米人にはどう聴こえるのか判らないが、私の身体には彼女の歌声がするすると入って来る。言葉が判らないのが本当に残念ではあるが...。
 アレンジのレヴェルも高く、何回聴いても聴き飽きない。何曲かは自分でもコピーして演奏したいと思った程だ。しかしここまで逞しい女性ヴォーカルは、ちょっと身の回りでは見つけられないかなぁ...。

 しかし中国も凄い逸材がいるものだ。北京から香港に移住し、わずか数年で香港のトレンド・セッター的存在に。そして「中国語圏最高の歌手」とまで言われるに至った。身長174cmは私と同じ。デケェなぁ。スタイル抜群で、バツイチ、子供アリなんてのも、なんか、逞しくてイイ(笑)。それにしても、フェイフェイ、最高である。大好き(思い入れ強過ぎて文章にならず。御免)。





"Shigeharu Mukai J Quinted
featuring Junko Onishi"
TOCJ-5557 (somethin'eles)


"LATIN PLAYBOYS"
9 42243-2 (SLASH/Warner)



 日本のジャズ界に彗星の如く登場した大西順子(p)を「私モ聴クナリ」と思い近所のレコード屋に行った。結局買ったのは大西のソロではなく、向井滋春(tb)との競演盤。バリトン奏者の悲しい性か、やっぱり管が聴きたいのだ(笑)。
 ところがこれが大当たり。日本の活気のあるジャズ・クラブで行われている演奏レヴェルと空気をそっくり詰め込んだ秀作であった。ジャズ・クラブが「まだ、ちょっと、コワイ」という人はこのアルバムでその雰囲気をお楽しみ下さい。



 さて早くも'94年。そろそろ「世紀末」も騒がれ始めた。世紀末がやって来るのは何もトーキョーやアムステルダムやベルリンだけではない。荒くれ一家が支配する、メキシコの片田舎にもやって来る...そんな感じを音にしたのが"ラテン・プレーボーイズ"の作品。

 アヴァンギャルドなサウンドが、中南米テイストに彩られて流れて来る。めまいがする程カッコイイ。このうちの何曲かはローバート・ロドリゲス監督/アントニア・バンデラス主演の映画『デスペラード』('96年)に使われていたけれど、私が連想したのは何といってもサム・ペキンパー監督の『ガルシアの首』('74年)だ。あの冷徹さがここにはある。しかしこれは単なる「前兆」だった...('96年につづく!)。





・女性宇宙飛行士、向井千秋さんがコロンビアで宇宙へ、旦那は岡千秋ソックリさん
・細川首相退陣、羽田、村山内閣へ、社会党から首相が誕生するもイタリアで下痢
・サダナリ、八戸に工場建設のため赴く、晩飯はジャズ喫茶で食う
・'60年代ロックがマイブーム、シンガーソング・ライターを追う(28〜29歳)





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