インターネットロックページ共同執筆 新譜/名盤クロスレヴュー |
月刊 ロック・クルセイダーズ No.031 Jun.'02 |
2001/06/20 Updated |
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今月は新譜の月です Brand New Choice of this month R.E.M. : REVEAL WPCR-11010 (wea) 2001/05/09 | ||
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とりあえずファースト・インプレッションです。 |
歌詞カードを見てもなかなかいい歌詞だと思う。歌詞と言っても英語力のない僕が見てるのは訳詞なわけだが、こういうバンドの訳詞を担当される方というのはやはりそれなりの言葉のセンスを持っておられるんだろう。沼崎敦子さんの手による訳詞を読むだけでもこのバンドの詞の良さは伝わってくる。 いい作品だけど、心がつながらないってやっぱりあるんだよねぇ。残念ながら僕とREMをつなげるきっかけがこのアルバムには見えてこない。特に最近僕はことロックに関して言うとメンタルな部分とフィジカルな部分の両方で刺激を求める傾向がある。メンタルな部分ってのは例えば歌詞の内容とかヴォーカリストの声に癒されるだとかいう部分で、フィジカルな部分ってのはバンドの持つグルーヴとか言った部分なのだが、残念ながら今回のお題は僕にそのどちらの部分の刺激もない。 さらにさらに。今この原稿を書いている僕はここしばらく仕事に忙殺されており、それこそ徹夜明けでそのまま仕事をして電池の切れた夜の10時に倒れるように寝たかと思うと深夜の3時からがばっと起きて再び仕事を始めるという状況にまで追い込まれているせいもあって、いつもよりメンタル&フィジカルの刺激を欲しているかも知れない。だから、ひたひたと自分の内的世界を歌われてしまう事に苛立ちさえ覚えてしまう。ごめん、REM。こんな時にあなた達の音楽と出会うなんてタイミングが悪すぎる。 仕事の打ち合わせに向う車の中で、逆ギレトランス状態でサミー・ヘイガー在籍時のヴァン・レイヘンを爆音でかけていた今の僕には、今回のレビューを書く心構えができてないとさえ思っている。だから仕事が落ち着いて、僕もひと息ついたら改めてこのアルバムをかみしめたいと思う。 でも!居直るわけではないが、僕がこういう状態である事を差し引いたとしても、僕はこのアルバムに求めるのは同じ事だと思う。特にフィジカル的な部分ではそうだ。歌詞の内容がいいからこそ、そしてそのメロディーもきれいなメロディーで歌われているからこそ、体をうずかせるビートやグルーヴを伴ってその歌を聞かせてほしい。特にドラムレスのメンバー構成なバンドに陥りがちなリズム面の認識不足に自覚を持ってほしいなぁと思うのである。(XTCの時も同じような事指摘してたなぁー)それと内的世界を表現するのはいいのだが、やはり人前に出すと言うことは「エンターテイメント」的要素も含んでいるのだから、その客観視できる視線を是非、バンドの外側から向けてみてほしい。お願いだからただ言いたい事を歌にするだけのバンドにならないでくれ。 あぁ、クオリティの高い作品だとわかっているのに、こんな事しか書けない自分の生活を反省せねば。ということでとりあえず「ファースト・インプレッション」なレビューだと許してね。 |
岩井喜昭 from " Music! Music! Music! " |
● 素顔に戻った「大物」 |
大変だ、R.E.M.がハイラマズになっちゃったよ。という話を聞いて、慌ててレコード屋にかけこんだ。世間的にはギターバンドのイメージが強い彼らだが、そういえばデビュー当時はバーズみたいだったし、98年にはピーター・バックがブライアン・ウィルソンと対談して、60年代ポップスへの知識と深い愛情を表明していた。しかも、あのヴァン・ダイク・パークスにプロデュースを打診したこともあるそうだ。 R.E.M.はハイラマズや一連のインドアポップ勢と同じく、キュートなポップソングへの憧れとパンクな開拓者精神を併せ持っている。しかも、ドラマーのビル・ベリーが脱退してロックバンドの形態を捨てなければならない今、彼らの指向性がハイラマズに近づいたとしても不思議はない。 というわけで、たぶん5〜6年ぶりに聴いた彼らのニューアルバム。オープニングのシンセサウンドには驚ろいたが、マイケル・スタイプのボーカルが聴こえてきた瞬間、彼らは相変わらずどうしようもなくR.E.M.であることを確認した。キャッチーな「Imitation Of Life」はバーズっぽいし、どの曲もポップソングとしてのしっかりした構成を持っていて、心地いいメロディと瑞々しいギターサウンドに溢れている。正しくR.E.M.である。ソフトロック的な後半の流れ、特にブライアン・ウィルソン風のコーラスがはえる「Summer Turns To High」がお気に入りだ。 ストリングスやホーン、キーボードを多用した浮遊感あふれるアレンジは、確かにバンド時代の彼らにはなかったかも知れない。でもこれ、全然ハイラマズじゃない。ビル・ベリーの穴をジョーイ・ワロンカー(レニー・ワロンカーの息子!)が埋めて、いちおうロックバンドらしい楽器編成になってるし。強いて言うなら、フレーミング・リップスやマーキュリー・レヴのサウンドに似ていなくもないかな。でも、フレーミング・リップスにあった生々しいやるせなさや、狂気に近い多幸感はこのアルバムからは感じられなかった。R.E.M.はもう、旗を振って最新の意匠を追求するバンドではないようだ。いいんじゃないの、それで。 R.E.M.はポップスの揺りかごに産まれ、パンクの波に乗ってアセンズの街から漕ぎ出した。20年が過ぎた今はもう、自分達の好きな音楽の本質を知っているし、自分達の本当の敵も知っている。一時期は時代のヒーローとして祭り上げられた彼らだが、もう心はアセンズ時代に戻っているのだと思う。次々とビッグセールスを打ち立てながらもアマチュアイズムを失わなかった彼らだからこそ、帰るべきところにちゃんと帰れたのだと思う。 「REVEAL」を聴きながら、僕はXTCの「APPLE VENUS VOLUME 1」というレコードのことを思い出した。かつてはR.E.M.をフロントアクトに従えていたこともあるXTC、彼らはR.E.M.のように商業的な成功を収めることもなかったけれど、相変わらずシーンの端っこで独自の進化を遂げている。99年に発表した「APPLE VENUS VOLUME 1」のサウンドは実に斬新だったが、あのアルバムは世界を少しも動かさなかった。 僕は、R.E.M.がカリスマなんかではなくただの音楽ファンであることを知っている。アセンズの小さな街角で、世界的な潮流とは関係なくR.E.M.だけの「進化」を続けて欲しいと思う。 |
山下スキル from " FLIP SIDE of the moon " |
● ギミックなきロックは快感をもたらすか?
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「へぇ、REMこんなのやってたのか?!」とオープニングで驚く。シンセの音は完全に'80年代風。「マイナス20年」がトレンドの旬だというけれど、まさにそういう感じだ。シンセベースもちょっとスゴイ。レイヴ系のアレではなく、全くの「エレクトロ・ポップ」。もうちょっとビートとヴォーカルが強かったら、ヒューマンリーグだよ、こりゃ。 ところがあとが続かないんだな、これが。1曲目はよくできました賞。2曲目は失速、3曲目はビブラートのかかったギターなど、「JOE 90」あたりのアメリカンTVテーマ・テイストを入れたかったんだろうけれど、ヴォーカルが出て来たとたん「なんだか単調な曲」になってしまう。 中盤は「なんかやってるなぁ...」という曲が続きかなりツライ。8曲目、ほとんどムーンライダーズのような曲で一瞬持ち直すが、その後もフックなきミディアム・ナンバーが続き、またしてもツライ時間が続く。う〜む...。 なんで?こうもフックのない曲が続くの?いつも「メロディ不在の昨今」なんて年寄りじみたことを言っているけれど、今回は「ギミック」について語りたい。歌舞伎でいうところの「ケレン」である。 REM、マジメなんだろうなぁ。政治活動とも近いところにいて、「もっとベネフィット・ショーをやって」云々なんて言ってる彼ら、きっとマジメな連中なのだろう。「だから」と短絡的に結びつけるのは早計かもしれないが、メロディーはフツーでマッドさがない。アレンジもイントロでは耳をひくが、曲中までは続かない。そしてなによりもヴォーカルがキレていない。なんか、こう、ひっかかって来るものがないのだ。 快感は何によってモタラサレルカ?心地よさを狙ったサウンドでもたらされる、こりゃ当たり前だ。昨年ご紹介したポール・サイモンなどがその代表。ヨカッタっすよね、ホントに。もうひとつ、トゥーマッチなプレゼンテーションも快感を呼ぶのだ。それがさっき書いたマッドでキレてる感じ。悪いお酒かオクスリのようなものだね。 それが、ないんですよ。どっちもナイ。なんか、最近多いんですけどね、こういうの。去年紹介のフレーミング・リップスもそうでした。ロックってフザケちゃってイイ、いや、オーヴァープレゼンスにこそロックの華やかさとパワーがあるんじゃないのかなぁ...。 なんとなく行ってしまった、付き合いで行ってしまったライヴ、そんなものも思い出しました。曲が始まった瞬間に、終わる時のことを考えている。最も虚しい音楽の聴きかたである。そんなことを思い出させる作品なのに、オビには「ロック・ヒストリーに残る名作!!」の文字。コピーなんて、歯の浮くようなことをわざと書くのか、それとも私の耳が鈍くなったのか...。 このレヴュー始まって以来の、中身のない文章で恐縮ですが、ともかく、ここまで。盟友、岩井さんもご多忙のようですが、サダナリも連日の深夜残業。でも、こんな時にスパっとハマる作品を聴くと、どんどん文章が湧き出して来るものなんですよ。でも、それがなかった。少々残念な感じも残りました。 ちなみに、このアルバムで少々欲求不満になった私が、すうっと手を延ばして次に聴いたのは、ステレオラブの『エンペラー・トマト・ケチャップ』でした。なんとも自然に、「体が欲していた」という感じで...。 |
定成寛 from " サダナリ・デラックス " |
See you next month
来月は " Good Oid Choice " 名盤の月です
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