川 島 雄 三 図 書 館



栄光なき天才たち 第二巻

森田信吾

平成9年5月21日文庫初版
集英社文庫 \650


 うれしいことにこの本は簡単に手に入る。『週刊ヤングジャンプ』1989年(平成元年)47号から1990年(平成2年)2号までに連載された川島の伝記漫画。若い世代の中には、この連載で川島を知ったという人も多い様だ。
 若き今村昌平氏をもうひとりの主人公に立てて、松竹大船時代の御用監督的な描写に始まり、主に日活時代の才気溢れる様を中心に物語が構成されている。特に『幕末太陽傳』撮影に関するエピソードが多い。
 2、3箇所だけ、漫画としての演出と思われる極端な描写はあるが、その他は実によく調べて描いており、コアな川島ファンが読んでも不自然な部分はない。不自然はおろか、衰弱し始めていた川島が夜の大船の街で風に吹かれて転び、大船観音に絡む場面はまるで川島映画の様な見事なタッチであったし、『幕末...』のラストの墓地は恐山であるという解釈は他に例がなく唸らされた。前出の書籍が手に入らないならば、まず資料としてこの本から始めるのも手である(マンガだしね)。中々の力作。
 平成2年に『幕末...』のスチールを表紙にして単行本で発売されたが、そちらは絶版。平成9年に文庫で再発された。359ページ中の98ページが川島で、あとは巨人軍投手の澤村栄治と、大正期に生きた幻の作家島田清次郎(吉村公三郎監督の大映映画『地上』の原作者)。特に島田の章が非常に面白く、川島目当てで購入した川島ファンが「島清ってスゴイねぇ」と皆、島清ファンにもなっている(笑)。






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